• 人事評価制度について

人事評価制度とは?メリット・デメリット、注意点など

By : 内間朋世

投稿日 : 2020/06/18

更新日 : 2020/06/21

人事評価制度とは?


「人事評価」とは、社員の能力やパフォーマンス、会社への貢献度に対して上司や人事が査定・評価を行うことです。半年や一年など一定の評価期間を設けて人事評価を実施し、その結果を昇進・昇格や報酬に反映させる社内制度のことを「人事評価制度」と言います。
評価期間は企業によって「四半期・半年・一年ごと」と様々です。

目次

人事評価制度を構成する3つの要素

人事評価制度は、主に「評価制度」「等級制度」「報酬制度」の3つの要素から構成されています。


図: 人事評価制度|評価制度・等級制度・報酬制度とは』 より

評価制度

評価制度は、会社の経営方針などを元に作成した評価項目に沿って、従業員一人ひとりの行動や業務上の成果、能力などを従業員の上司などが評価する制度を指します。評価する対象は、従業員の能力や成果、また行動や勤務態度など様々です。
評価制度によって査定された結果は従業員の等級や報酬に反映されます。

等級制度

等級制度は、従業員の能力・職務・役割などによって段階的に序列化し、業務を遂行する際の権限や責任などを明確にする制度です。 等級ごとに定められた評価基準に沿って従業員に等級が割り振られます。

報酬制度

報酬制度は、等級や人事評価の結果を基に社員の報酬を決める制度です。給与、賞与、退職金などが「報酬」に該当します。

人事評価制度の歴史

〜年功序列の時代〜

日本の人事評価の歴史を遡ると、1950年代に年功制による評価の原型ができたと言われています。「年功序列」とは、年齢や勤続年数に応じて、役職・賃金を上昇させる人事制度のことを指し、多くの企業で採用されていました。
近年「年功序列の廃止」がうたわれて久しい日本ですが、当時としては「高度経済成長を支えた人事制度」でもありました。戦後間も無い時期、生活の安定と保証が求められていた時代において「年齢に応じて公平に給与を上げていく」という年功序列の仕組みは、雇用を確保するうえでも有効に働いた人事評価制度であったと言えます。

〜成果主義への移行〜

年功序列が一般的だった時代から、成果に応じて給与を支給する「成果主義」へと変化し始めるのが1990年代のバブル崩壊です。長引く不況やグローバル化により、日本企業の労働に対する考え方は変化し、年功序列のような従来の雇用形態は衰退していきます。
しかしながら、ガチガチな「成果主義」は日本の企業文化に適合しないこともあり、多くの企業が失敗に終わります。そこで「結果だけでなくプロセスも重視」する、MBOやOKRのような新たな評価手法がHR先進国アメリカから持ち込まれ、注目を集めるようになります。


人事評価制度の目的とは

人事評価制度を取り入れる目的は何なのでしょうか。人事評価制度の導入にあたり、その「目的」を明確にしておきましょう。

社員の処遇の決定

勤続年数に応じて給与などが変動する年功序列ではなく、企業が独自に定めた評価基準に沿って評価を行い員の処遇を決定するという考えです。予め決められた客観的指標で評価をすることで、処遇に対する社員からの不満を減らすことができます。

会社ビジョンの共有

組織全体で生産性のある業務を遂行するには、社員に対する企業の目標やビジョンの共有は欠かせません。人事評価制度は、会社が「どのような価値観や目的で、どんな目標を持ち、どのような方向性を目指しているのか」といった経営方針・経営理念を基に作成されるのが一般的です。これら組織の指針を社員に指し示す上でも、人事評価制度は大きな役割を果たしています。

社員の育成

会社にとって最も大切なことの一つである「人材育成」を行う上でも、人事評価制度の導入は必要不可欠です。例えば、適切な評価のもと、見合った報酬が用意されていれば、「これを達成すればこの報酬が得られる」というモチベーションにもなり、社員の成長を促す重要なポイントになります。
また、いくら優秀な社員がいても、人事評価制度が整っておらず、会社と目指す方向がずれていては、企業のスピード感のある成長は難しいでしょう。それを防ぐためにも、やはり人事評価制度による人事評価の管理は不可欠です。

人事評価の種類

では、実際に人事評価を行うにあたり、社員の何を評価すればよいか、3つの評価の種類をご紹介します。実際の人事評価制度ではこれらのパターンを組み合わせて評価項目としている企業が多いようです。

能力評価

担当する業務において「必要な知識や能力を持っているか」が評価の対象になります。例えば、資格の有無も評価を左右するポイントになります。
能力評価は、年齢とともに給与がアップする年功制と比べ、仕事に対するスキルや知識を評価・査定に用いるため、能力主義とも言われます。

情意評価

社員の仕事に対する意欲や姿勢、勤務態度を評価するものです。いわゆる「やる気があるか」が見られます。特に、まだスキルが身についていない新入社員や若手社員を評価する際に取り入れられるケースが多いです。

業績評価

目標に対し、達成された「成果」を評価します。例えば営業であれば、「前年比で粗利率を5%アップする」という目標に対してどれくらい達成できたのかが評価の対象となります。このように業績評価の場合、評価軸を数値化しておくのが基本ですが、中には数値化するのが難しい職種もあります。この場合、社内で議論をした上で、社員も納得するような形で数値化をするのが推奨されますが、それでも難しい場合は無理に数値化するのはやめ、「○○の業務を達成した」というように定性的な評価を設定する方が有効です。

評価方法の種類

次に、評価方法について見ていきます。
「何を評価するか」を決めたら、これらを「どのように評価をするか」を定める必要があります。人事評価制度では主に3つの評価手法があります。

目標管理制度(MBO = Management by Objectives)

社員が設定した目標に対し、その達成度合いを評価する手法のことを指します。会社の目標とズレが出ないよう、事前に双方で認識を合わせる必要はありますが、基本的には社員自身に目標を決めてもらい、社員の自主性も重視します。MBOは日本語で「目標による管理」とも訳され、本来マネジメントの手法になりますが、お互いの共通認識のもと目標を設定するため、会社と従業員双方の納得感が得られるというのがメリットです。

目標管理については、こちらで詳しくご紹介していますのでご参照ください。
👉   目標管理とは?|メリットやメソッドなど

コンピテンシー評価

“コンピテンシー”とは、「職務で一貫して高い業績を出す人の行動特性」のことを言います。コンピテンシーが高いモデルとなる社員の行動特性を基に評価項目を作成し、評価項目にどれだけ沿った行動が出来ているかで評価を行うことを、コンピテンシー評価と言います。

360度評価(多面評価・周囲評価)

360度評価は、上司だけでなく、部下や同僚、ときには異なる部署の社員が評価を行います。多方面からの評価を行うことで、評価の客観性や公平性が増すメリットがある一方、「人事評価の知識を持たない者が評価を行うことへの懸念」や「評価を気にするあまり人間関係に影響が出る」といったデメリットもあります。360度評価を採用する際は、「評価結果を処遇に反映しない」、「評価は匿名にする」といった工夫が必要です。

人事評価制導入のメリット

生産性の向上

従業員の成果や能力に見合った昇給・昇格を行なうことで、社員のモチベーションは向上し、より高い成果や能力習得を目指し業務に励むことになるため、一人ひとりの生産性が向上します。また、個人だけではなく会社全体の生産性向上も期待できます。

人材育成の促進

人事評価制度では、個人の目標が明確になるため、「目標に対し何が不足しているか」、「何をすれば達成に近づくか」など課題も明確になります。その課題に対し、上司からサポートを受けたり、研修や本などで学習をしたりして目標達成のために努力を重ねることは、スキルアップへと繋がります。

信頼関係やエンゲージメントの向上

上司から適切なフィードバックをもらうことで「きちんと成果が認められた」という、企業への信頼と安心を得ることができます。人事評価による評価結果を処遇への反映だけにとどめるのではなく、「社員の頑張り」にもフォーカスを当てることで、信頼関係の構築や、エンゲージメントの向上へと繋げることが出来ます。

人事評価制導入のデメリット

手間がかかる

人事評価制度を導入する上で、会社目標の設定や、適切な評価基準や評価手法の設定など、様々な準備が必要となります。せっかく人事評価制度を導入しても、これらをおろそかにしてしまえば、記録や履歴の管理が煩雑になり人事評価制度の効果が得られないどころか、マイナスに作用してしまう可能性もあります。

社員から不満が出る可能性がある

企業が定めた評価制度が曖昧であったり、従業員にとって納得のいくものでない場合は、社員が不満を溜めてしまう原因になります。人事制度に対する社員の不満は、離職の直接的な原因にもります。

モチベーションの低下を引き起こす可能性がある

適切に評価をしたとしても、低評価を受けた従業員にとってはモチベーションを下げる要因になりかねません。「全従業員が満足のいく評価を受ける」というのは難しいため、やる気を削がないようにネガティブなフィードバックをするスキルがマネージャーに求められます。

人事評価制度を導入するときの注意点

明確な評価基準を提示する

評価を行うにあたり、評価基準を明確に設定し、それを社員にきちんと提示する必要があります。基準が社員に伝わっていない状態で評価を行うと、社員は評価に対して納得ができず、「成果に対して適切に評価されてない」と不満を抱く原因になります。会社に対する信頼の喪失にも繋がるため、「評価基準の明確化・共有」はきちんと行う必要があります。


「公正で客観的な評価」を行う

人事評価を行う上で、評価者が「私情を挟まず、客観的かつ公正に評価を行う」ことは非常に重要なポイントです。
例えば、被評価者の一部の良い面だけを見て評価全体を良くしてしまう「ハロー効果」や、評価対象者との関係によって主観的な評価をしてしまう「寛大化・厳格化」といった人事評価エラーが発生してしまう可能性があります。
評価者はこれらに注意して評価を行う必要がありますが、人間誰しも感情が入ってしまうことはあるため、「評価者に対して、人事評価エラーを起こさないよう事前に評価者研修を行ったり、最終の評価結果を人事が総点検するなどして、会社全体で公正さを保つ工夫を行うことが大切になってきます。

フィードバックを行う

人事評価というと、「評価」そのものにフォーカスが当たりがちですが、フィードバックもとても重要な役割を担っています。フィードバックをすることで、今後の課題が浮き彫りになり評価者と被評価者の共通認識として明確化され、今後目指すべき方向もクリアになります。適切なフィードバックがなければ、課題が曖昧のまま業務を継続することとなり、社員の成長を期待することは難しいでしょう。
忙しい時期におろそかになるなど、フィードバックがきちんと取り入れられていないケースが少なくないですが、企業の成長は社員の成長によってもたらされるため、きちんと行うようにしましょう。


人事評価制度の失敗例と解決策

評価基準が会社の目標と紐づいていない

評価基準が会社の目標とリンクしない場合、会社と社員は別のベクトルに向かって進むことになり、従業員一人ひとりの行動に一貫性を保てなくなります。
結果、会社全体の生産性が落ち込んだり、一体感を感じられずモチベーションが低下したりとマイナスに作用してしまいます。
会社の目標や価値観、目指す方向性は明確にし、しっかり社員と共有しておくことが重要です。

評価基準が明確でない

何をどう頑張ったら評価されるのか基準が曖昧の状態で評価を行うと、双方が納得のいく人事評価を行うことは難しく、社員からの不満も生まれやすくなります。評価基準を作成するのはそれなりの時間と労力がかかりますが、決してあやふやなものににせず、明確な評価項目を設定するようにしましょう。
評価制度を作ったことの無い企業は、社労士さんや評価制度を専門にしている人事コンサルティングなどに相談するのが良いでしょう。

成果主義に重きを置いた評価になっている

成果主義の評価そのものが悪いというわけではありませんが、成果主義に偏った人事評価を運用すると失敗に繋がる可能性があります。「結果」だけにフォーカスが当たると、社員が目標を低く設定してしまったり、個人主義の社員が増え、チームとしての成長を阻害する原因にもなり得ます。結果だけではなく、プロセスや成長率も注目しながら評価をすることが大切です。
またOKRを導入している組織が評価制度を導入する場合は、チームで協力しながら成果を出していくOKRのメリットを潰さないように、目標に対しての成果だけでは評価をしない運用がスタンダードな考え方となっています。

評価者の評価スキルの不足

人事評価制度の内容も重要ですが、実際に評価を行う担当者の評価能力が不足していれば、制度は上手く機能しません。
例えば、個人的な感情が評価に影響する「人事評価エラー」は、評価能力の不足により起こる失敗の原因の一つです。これを防ぐためには、事前に評価者の適正を会社側が見極める必要があり、必要であれば、リーダー陣に対し評価スキルの研修を行うなどの対策が求められます。

フィードバックがおろそかである

評価時にフィードバックがなければ、「なぜこのような評価なのか」、「今後何を改善すればよいか」を社員が知ることがきません。評価結果に納得の行かなかった社員はモヤモヤを抱えたまま働くことになり、会社や上司へ不満を抱く原因にもなります。また、従業員の課題を改善してくことも難しくなるため、一人ひとりの成長を阻むだけでなく、企業全体の成長にも影響が出てきます。このため、人事評価制度を導入する際は、評価とフィードバックはセットとして捉えるようにしましょう。


中小企業こそ人事評価制度は必要である

日本の企業の9割以上が中小・零細企業だと言われておりますが、人事評価制度を適切に運用している中小企業は多くありません。中小企業において、管理者にあたる人たちはプレイングマネージャーである場合が多く、人事評価に時間をかけるのが難しい現状があります。このような、中小企業ならではの問題が人事評価制度の導入をさらに難しくしていますが、中小企業こそ人事評価制度を積極的に取り入れて欲しいという理由があります。

社員が同じ方向を目指して業務を遂行する必要があるため

資金も人材も限られた中、競合の多い市場で勝ち抜いていくには、会社全体が一丸となて仕事に取り組む必要があります。会社の目標や経営理念をもとに評価基準を定め、それを社員に共有することで、会社と従業員が同じベクトルを向きながら、共に仕事をすることが出来ます。また、仕事をする中で生じる被評価者の課題に対し、評価者がサポートしたり、フィードバックを行うことで被評価者と評価者の間に強い信頼関係が育まれるようになり、目標に向かう一体感や充実感を補強することが出来ます。

人材育成のため

会社が成長していく上で極めて重要な資産である「人材」ですが、人材の採用、特にリーダーとなる人材を採用するための時間とお金は非常に大きなものです。
大手企業のように人材確保に時間と労力をかけることが難しい中小企業において、「今いる人材を育成していく」というのは非常に重要な経営戦略になってきます。このため、適正を持った従業員をリーダーへと育成する人事評価制度は欠かせません。
人事評価制度を適切に運用すると、従業員一人ひとりの現時点での能力や意欲、成長率などを把握することができ、「リーダーとして適正がある人材」を見つけ出す手がかりになります。また、昇格のための評価基準を設けることにより、リーダーになるための課題も明確化され、マネジメント層を育成する仕組みを作ることができます。

中小企業ならではのメリットを活かすことができる

人事評価制度の導入は中小企業にとって壁となる問題が多いなか、「中小企業だからこそ」上手く運用できる点もあります。
まず、少人数ゆえ大手に比べて社内のコミュニケーションが取りやすいというメリットがあります。日頃から上司が部下の業務をしっかり把握していること、コミュニケーションを深めお互いの信頼関係が構築できていることは、人事評価を行う上でとても重要です。これは社員間で交流が取りやすい小さいな組織にとっては実現しやすいでしょう。
また、「柔軟性をもって取り組む」というのも人事評価制度を運用する上で有効です。例えば、「評価基準の特定の項目を見直した方がよい」という状況で素早く起動修正が行えることは、小さい組織にとってメリットであると言えます。

まとめ

今回の記事では、人事評価制度の歴史から、人事評価の重要性、目的、注意点などをご紹介してきました。人事評価制度を導入し、さらに継続的に運用していくのは時間や労力がかかることではありますが、上手く運用できたときの恩恵は非常に大きいものです。
「人事評価制度」と一言でいっても、会社の目標や規模、業種などによって様々な評価方法がありますので、あなたの会社にフィットした、独自の人事評価制度を構築していくことが大切です。

人事評価における目標管理の手法はいくつかありますが、その中でもOKRは今特に注目を浴びている目標管理メソッドになります。GoogleやFacebookなどシリコンバレーの企業や、国内ではメルカリが取り入れていることでも有名です。人事評価制度を運用するうえで、どう目標管理をしてくかわからないという場合は、OKRをご検討してみてはいかがでしょうか。

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